NTL「誰もいない国」2018/07/18 16:33

ナショナル・シアター・ライブ「誰もいない国」をシネリーブル池袋で観た。
演出 ショーン・マサイアス(『ベント』)
出演 イアン・マッケラン、パトリック・スチュワート、オーウェン・ティール(「ゲーム・オブ・スローンズ」) ダミアン・モロニー(『ハード・プロブレム』)
ハロルド・ピンターの作品なので不条理感で訳わからないかもと思いながら、役者が観たくて参上。余談だが私としては大事な関連事項であるのは演出のショーン・マサイアスは映画「ベント 堕ちた饗宴」の監督でもあった事だ。
この「ベント」は映画も印象に残る作品だったし佐々木蔵之介、北村有起哉出演の舞台も観た。
しかしながら「誰もいない国」は分からない。それでも面白いと思うのはその場のやり取りで、役者の表情のアップや細かい仕草の妙がカメラによってはっきりと目にすることができる。これで満足する。
何を観たか、何か訳のわからないものか。
どこにあるか分からない切り取られた時間がそこにあったという感じ。
最後のカーテンコールが終わるとQ&Aのコーナーがあり、4人の役者と演出家が登壇した。その中での話は理解しないこの頭には良いガイダンスになった。
役者の演じる喜びが何より伝わってきたことは重要。
マッケランがサーの称号を持っているのは知っていたけれどパトリック・スチュアートもまた、とは知らなかった。
観てよかった♡

備忘録の意味を成さない今日この頃。2017/08/05 04:17

死にそうな猫を慌てて病院に連れて行くとか、それで解決したわけでなくて、持病を抱えているのを薬の投与や何日か毎の点滴通いとかで小康状態を保っておくなんてやったりしてると、隙間を縫ってどこか出かけて印象を書き残したいと思ってもつい書き忘れて何日も何週も経ってしまうんだな。

その当の猫は薬や点滴のお陰で食欲も出て体重が増え、見た目は元気になった。高齢猫ならかなりの率で罹患する腎臓トラブルなのでこの治療を続けて行くしかない。進行を食い止めるまでは行かないがある程度抑えて行くというものだ。
とにかく無理のない治療法で命が延びた。
頑張れ、年寄り猫。

先日の劇団☆新感線の舞台を観に行ったときの豊洲の風景。
涼しげだがぬるく湿っぽい風が吹いていた夕暮れ時。

「髑髏城の七人 Season花」2017/06/02 03:07

今年3月30日にオープンした「IHIステージアラウンド東京」の杮落としとして6月12日まで何と2ヶ月余りの公演。
「1300人を乗せた巨大な円形の盆が、360度回転し.ぐるりと舞台が取り囲む」アジア初のステージアラウンド劇場、というのが謳い文句。場所は豊洲駅から徒歩20分。
オープン初年の一年は劇団☆新感線の「髑髏城の七人」が花鳥風月4パターンで行われる。
Season花の出演者は小栗旬、山本耕史、成河、りょう、青木崇高、清野菜名、近藤芳正、古田新太、他。
今回の刀鍛冶贋鉄斎は古田新太でネタキャラとしては最高だった。
小栗旬の捨之助はこの上なく漂う色気で着流しが映えること。姿もよくて見直した。山本耕史の蘭兵衛も綺麗だったなあ。青木崇高の兵庫も剽軽ぶりがよく出ていて、テレビドラマ「ちかえもん」の万吉を懐かしく思い出した。
極楽大夫のりょうもきりりとした女ぶり。天魔王の成河もこなれた動きで、あまり舞台は見たことがなかったけど流石という感じ。
劇場の大きな特徴はいのうえ歌舞伎が待ち望んでいたシステムのように感じて納得。

「リチャード三世」2017/02/17 23:38

映画館でアルメイダ劇場での上演作を観る。
現代ならではの演出がやはり印象に残る。
何年か前にリチャード三世の骨が発見されたニュースがあったが、それを舞台のプロローグにした。
それにしても今日観る「リチャード三世」がこれ程にリアリティを持って心に迫るとは。
反知性社会である今だからこそか。
いつもならリチャードを見るとき、グロテスクを楽しんでいた。
今は楽しむ余裕のない状況でグロテスクとはこういうものだと突きつけられて、言葉を失っている。現実に起こっていることが頭をよぎる。
それだからこその素晴らしい芝居。
レイフ・ファインズのリチャードの繊細ないやらしさが際立った。
バネッサ・レッドグレープの舞台を初めて眼にできたのは幸せ。
訳本でにしろ、読み返さずにいられない。

知の巨人たちを見上げることしかできない。

「NINAGAWAマクベス」(1985)2017/02/17 11:51

CSで蜷川幸雄、平幹二朗への追悼番組として放送されたものを録画して観た。
小田島雄志の訳本、衣装は辻村寿三郎、舞台美術は妹尾河童。
演出や舞台美術、衣装の素晴らしさは言うまでもないが、平幹二朗の只ならない存在感は今更ながら圧倒的。
役者の狡猾さと言うのか、あの顔つき眼の表情。天才が努力して露われるものなのか。
マクベス夫人は栗原小巻で、やはり舞台役者の面目躍如。
マクベスの最後はマクダフの剣に倒れた後、幼児のように体を縮めていく姿で終わる。
これが二、三年前に観た市村版にあったかどうか覚えていないが、このような演出の姿が似合う妖気漂う俳優はなかなかいない。

NHKEテレ ETV特集「その名は、ギリヤーク尼ヶ崎 職業大道芸人」2017/02/13 23:55

時は残酷だが奇跡を見た。
若い頃、上野や新宿で彼の踊るのを何度か見たことがあった。いつも偶々出会うのだ。
これほどまでに激しくて痛みを感じる踊りは私には受け入れ難いもので、未だにその感覚は拭えていないように思う。
このドキュメンタリはギリヤーク尼ヶ崎の2016年10月10日の新宿公演までの三ヶ月間の記録で、彼は86歳。
なんらかの病気で思うように動けなくなった彼は痛ましいほどだ。その介護をするのは約10歳年下の弟。
病名がパーキンソン病とわかるのは公演間近で、病名が判明したためか、あるいは適切な投薬のためなのか驚くほど体が動いてきている。表情も明るくなった。
大道芸人という名の表現者=芸術家の最後を見届ける覚悟ができるか、と思いながら見終わる。

ディレクターの言葉がここで見られる。
http://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/original.html?i=09094

「足跡姫 時代錯誤冬幽霊」2017/02/01 23:50

NODA・MAPの21回公演。東京芸術劇場プレイハウスで2時から。
サブタイトルの「時代錯誤冬幽霊」は「ときあやまってふゆのゆうれい」と読みが附ってある。
宮沢りえ、妻夫木聡、古田新太、佐藤隆太、鈴木杏、池谷のぶえ、中村扇雀、野田秀樹。
「勘三郎へのオマージュ」と謳っているのでそのつもりで観る。
そのつもりでなくても主役は「三、四代目出雲阿国」であり、その弟は「淋しがり屋サルワカ」であったりするので歌舞伎に因む物語とわかる。
数にこだわる台詞がずいぶん出てきて、最後になるほどと思う。
ここを観るためにそれまでの時間を過ごしたのだと思った。

「鈴木杏」はとても存在感を感じさせる。
「佐藤隆太」は何年か前に見た舞台であまりいいと思わなかったのは、滑舌やリズムが悪いと感じたからなんだけど、今回は力がついたのか、すごく良かった。
主役は言うまでもなく。
「古田新太」の「死体/売れない幽霊小説家」役はハマっているな。
「中村扇雀」の落ち着いた歌舞伎役者ぶり。時代劇だけど現代劇って中で小気味いい雰囲気。
周りとのギャップが楽しい。

「豚小屋」2017/01/13 16:38

新国立劇場小劇場で。2時から。
北村有起哉、田畑智子の二人芝居。
「BENT」で息詰まる男同志の愛を演じた「北村有起哉」が、演者二人の芝居で何を演じるのか観たくなった。
脚本はアソル・フガードという南アフリカ出身の人で世界的に名前の知れた人だった。アパルトヘイト体制下で弾圧も受けていたとのこと。1936年生まれ。
「豚小屋」ってタイトル通りセットは豚小屋。それだけ。
それ以外は客席を利用する。
二次大戦時に軍を脱走し何十年も豚小屋に隠れ住まなくてはならない男の話だ。
妻は生活の糧である豚の世話をし、豚とともに生活している夫の世話をする。
男は豚を殴りながら哲学で今の自分を宥めたり、憐れんだり、狂気に逃れようとし、その淵まで行くこともあるが辛うじて正気を保っている。女は目の前の現実が全て。
夫の、高みに上がる哲学的狂気の勢いを削いでみせて、かっこいい!これぞ狂気と喜ぶ観客を呆気に取らせ、あんぐり口を開けている夫を見て笑う。
「田畑智子」はケラさんの舞台でも見た。個性的ないい役者さんだなと思った。
北村さんはもう期待通り。

シネマ歌舞伎「阿古屋」2017/01/12 23:00

今、坂東玉三郎しか演じられないと言われる「阿古屋」を実際の舞台で観た事がなかったのでシネマ歌舞伎は願っても無い機会。
2014年に演じられたもの。
もう、いいに決まっている。
菊之助も素敵だったが、人形仕様で登場する岩永を演じる坂東亀三郎も流石。
玉三郎の指導がスタッフ、舞台の照明まで行き届く中、定式幕が映し出され幕が引かれて芝居が始まる。
映画版が良いのはディテールが映し出されることだ。
劇場の中の雰囲気で舞台を感じるのとはまた別の面白さがある。

AXNミステリー「英国男優のすべて」2016/12/28 23:12

CSの専門チャンネルAXNミステリーが放映している約1時間のドキュメンタリー番組で「英国男優はこうして作られる」というサブタイトルが付く。
イギリスの俳優養成システムや、歴代の名優や現在映画やテレビドラマなどで活躍している男優を取り上げている興味深い内容だった。
日本語のナレーションは北村有起哉。日本の劇作家で第三舞台主宰鴻上尚史が日本の演劇システムの違いなどについて語っている。
ケネス・ブラナーが自分の劇団を使ったことの意義。
国内一番の王立演劇学校「RADA」についても。
鴻上さんの、演技理論を含め日本と英国の土壌の違いなどの話は面白い。

前に感想を書いたクロムウェルを描いた「ウルフ・ホール」のマーク・ライランスもあったので嬉しかった。シェークスピア俳優と呼ばれる一人。
まあ、AXNミステリーチャンネルで放送するドラマに絡んだ内容なので宣伝の一環といえばそれまでなんだけど。