「ホロウ・クラウンー嘆きの王冠 Hollow Crown」2022/12/18 15:05

このシリーズの最後を飾るのは「リチャード3世」だから、見終わったばかりのリチャードのトピック。どのリチャード三世が好きかなんて好みの問題で、いくつかのリチャード3世の中で、私はアル・パチーノのリチャードが物静かで凄みがあって好きだ(でもいずれも一度しか観ていないからな) このホロウ・クラウンのカンバーバッチのリチャードは好きじゃなかった。演出のせいでそう感じただけかもしれないから、本当に当てにならないという意味で単なる好みです。あとは自身の教養のなさですな。呪いの場面のアレンジは、ちょっとひねりが効いていて興味深いからもう一度構成を見るべきところと思うが、好き嫌いならあまり好きじゃなかった。

ヘンリー5世がヒドルストンで目がハートに変わったのは、ひよこが生まれて初めて見た生き物を母親と認定するのと同じ作用が働いただけかも。他にヘンリー5世は文字でしか縁がないのです。

百年戦争、薔薇戦争を背景とした歴代国王の名のついたシェイクスピアの作品で読んだのは「リチャード三世」と「ヘンリー五世」だけだ。故に時代に沿ってシェイクスピアの王の物語が一連のシリーズに映像化されたことは、私にとってこの上ないありがたき幸せ(加えてチャンネル登録7日間無料というサービスを利用)

で、「鎌倉殿の13人」が最終回を迎えた。シェイクスピア劇を観るような面白さだったから、途中からにしてもずっと楽しめたのだけど、先週あたりでヘンリー五世のアジアンクールの演説と、政子の演説を続けて聞くタイミングになったのは、面白い偶然だった。

シーズン1の「リチャード2世」は舞台装置と演出の際どさで好き。

クロ現のサブタイトルは「戦後75年 "戦争遺品"どう守り伝える」2020/07/30 22:21

NHKクローズアップ現代は「"歴史"が消えていく」というコンセプトで「戦争の記憶をつなぐ資料館・慰霊碑の危機 貴重な資料が散逸」という内容。
遺品の保存の現状を追跡するが、それは考えていたより酷い状況だ。
平和祈念館などの設立が歴史認識の違いから議論が止まったままだという。
慰霊碑が老朽化して再建されない。
軍事物資をネットで手に入れ、それを身につけてゲームのように体験する人がいること。
次の世代で戦争は忘れられているだろうと語る戦争体験者。
修復をするにしても、かかる時間や予算はただならぬものがあると思うし、国防などと言っていたら内省からはこれまた程遠い。
既に日本は劣化していると感じる今日この頃なので、失望レベルはかなり深刻。


https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/WV5PLY8R43/episode/te/GVW7YJG5XW/

「落語名鑑」2019/11/03 11:33

NHKの林家正蔵がMCの番組、録画しておいた。
先週と今週の対談ゲストは桂米團治。大好きなんで。
正蔵が「兄さんは沢山の知識や芸事も凄いし色艶もあって」と言うと、色艶については米朝仕込みだと返事があった。
米朝師匠は御茶屋遊びに行くと下の弟子まで一緒にお座敷に上らせるので、そこで学ぶものが後々高座で役に立つと。
カッコええなあ。

「ザ・プロファイラー 小説家ヘミングウェー」2019/02/15 13:45

NHKのザ・プロファイラーを録画したのを興味深く見た。
フルタイトルは「小説家 ヘミングウェー/ヒーローを演じ続けた男の真実」 (1899年生〜1961年没)
1954年に二度も飛行時事故で重傷を負った事は知らなかった。
それから書けなくなった苦しみを抱いて七年後の自殺。
私はある時猫好きで知られ多くの猫を飼っていたヘミングウェイが、仔猫を噛み殺したという理由でそのオス猫を銃で撃って殺したということを知ってショックだった。猫という動物を愛しながら本能で子猫を殺したオス猫を銃で撃ち殺せるってどういうことか。それは気になることの一つ。
戦争の真っ只中にいたことや猛獣狩りを趣味ともしたことが関係あるのか。
ヘミングウェイの感覚を理解するのは私には無理そうだけど、魅力的な男よね。

落語まみれ2019/01/14 11:32

「としま初春寄席」のあった13日は米團治が銀座ブロッサムに来る日で、知ったのが遅かったから行く選択はなかったんだよね。
一昨年だったか1月にチケットを取って初めて米團治を見たんだった。品が良くてしゅっとしてていいなあと思った。何より面白かった。でもその時の噺はすっと思い出せない。
まあ昨日CSで「TBS2019年版落語研究会」をやっているのを録画したんでいいです。
米團治師匠は「たちぎれ線香」これは実際の会場で聞いていて泣いた人がいたんじゃなかろうか。
中盤まで聞く限りこんな切ないんで終わってしまうのかと泣ける。
ドラマチックに盛り上げる感じが上方らしさと言っていいのかしら。
中席の分は途中からで柳家さん喬「抜け雀」が聞けた。これは昨年末小朝師匠の上方の道具立てで聞いていい話だとしみじみしながら帰った。様子が違う柳家さん喬版も面白かった。

新春落語研究会〈下席〉2019年版
三遊亭小遊三「付き馬」、桂米團治「経ち切れ線香」、柳亭市馬「妾馬」

「グランチェスター 牧師探偵シドニー・チェンバース」2018/08/03 17:35

牧師探偵の最終回を観終わってしまった。
ジャズとウィスキー🥃を愛するシドニー・チェンバースという若き牧師が友人である刑事とともに事件を解決してゆく英国テレビドラマだ。
ただひとりの女、初恋の人との愛は育つのか、牧師であるが故の悩みが全編を通底する。
彼を取り巻く人間模様も味わいがある。夫々の今までの人生とこれから何をどう選んでいくか、愛の様々な形、葛藤が描かれる。時に優しく時に厳しく支え合う。
って誉め殺しか。
時代は1950年代。いろいろな差別がよりもずっと激しく抑圧されていた時代。時代の良い香りを感じつつ。
いいドラマの最終回は観たいような観たくないような。

シリーズ深読み読書会「宮部みゆき〜時代小説の最高峰孤宿の人」2018/02/14 23:29

このNHKの読書会は不定期な番組なのでいつやるか分からない。
今回危うく見落す処だった。複数のゲストがそれぞれの見方を披露していく構成で、取り上げた作品がより立体的になっていき自分自身の理解が深まったかのように思えるのが何より快感だ。
今回は宮部みゆきの時代ものである。
宮部みゆきが一番苦労した小説と言っているこれは、ただならぬ物と感じつつも私は好きになれない作品だった。理不尽が過ぎて耐えきれなかったのは、多分読みが浅くてダメだったんだろう。
奇々怪界な噂を持つ加賀様の謎を解くだけと思い込んで読み始めた私は、文庫本上下巻読み切るまでそれを切り替えることができなかったにも拘らず、宮部の魅力のある文章に囚われたままだった。
ともあれ何とも言いようのない寂寥感が残ったこの小説の解題に興味津々で録画を見始めたが、お陰で読み直すことなく何故面白いのかをわくわくしたまま理解した。いや、意味わからなくても面白かったから読み終えることはできたんだけど。
冒頭で進行の鈴木杏が「繊細で複雑で豊かな作品」との形容、その通り。

「NINAGAWAマクベス」(1985)2017/02/17 11:51

CSで蜷川幸雄、平幹二朗への追悼番組として放送されたものを録画して観た。
小田島雄志の訳本、衣装は辻村寿三郎、舞台美術は妹尾河童。
演出や舞台美術、衣装の素晴らしさは言うまでもないが、平幹二朗の只ならない存在感は今更ながら圧倒的。
役者の狡猾さと言うのか、あの顔つき眼の表情。天才が努力して露われるものなのか。
マクベス夫人は栗原小巻で、やはり舞台役者の面目躍如。
マクベスの最後はマクダフの剣に倒れた後、幼児のように体を縮めていく姿で終わる。
これが二、三年前に観た市村版にあったかどうか覚えていないが、このような演出の姿が似合う妖気漂う俳優はなかなかいない。

NHKEテレ ETV特集「その名は、ギリヤーク尼ヶ崎 職業大道芸人」2017/02/13 23:55

時は残酷だが奇跡を見た。
若い頃、上野や新宿で彼の踊るのを何度か見たことがあった。いつも偶々出会うのだ。
これほどまでに激しくて痛みを感じる踊りは私には受け入れ難いもので、未だにその感覚は拭えていないように思う。
このドキュメンタリはギリヤーク尼ヶ崎の2016年10月10日の新宿公演までの三ヶ月間の記録で、彼は86歳。
なんらかの病気で思うように動けなくなった彼は痛ましいほどだ。その介護をするのは約10歳年下の弟。
病名がパーキンソン病とわかるのは公演間近で、病名が判明したためか、あるいは適切な投薬のためなのか驚くほど体が動いてきている。表情も明るくなった。
大道芸人という名の表現者=芸術家の最後を見届ける覚悟ができるか、と思いながら見終わる。

ディレクターの言葉がここで見られる。
http://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/original.html?i=09094

プレミアムカフェ「ガルボの恋文」2017/01/19 01:34

NHK-BSプレミアムで初回放送は2011年で、これを見ている。
なんとも言えない素晴らしい映像だ。
グレタ・ガルボの資料映像や彼女に関わる風景だけがが素晴らしいのではなく、玉三郎が恋文を読み上げる声やその場所にいる佇まいが全て溶け合ったもの。
完成度の高いこと。何度見ても飽きない。
繰り返し流れる「someone to watch over me」
玉三郎が日本語訳詞でこれを口ずさむところは感動する。
マーラーも素晴らしい効果を上げている。