今年が終わりそうだ2022/12/27 02:02

12月はエンジンがかかり展覧会、芝居、映画をそれなりに観ることができた。ライブはなかったけど、その前に聴きに行ってるからそれを足したら完成ね。美しい本も買ったな。
体力がだいぶ取り戻せた実感があって、重い気分から解放されたのか、楽しい気分が持続している。(変なハイ状態じゃないだろな)
戯曲、脚本、台本呼称はなんでもいいが、芝居の言葉を見直すことがこれがまた、とてつもなく楽しいことのように感じる。今月観た芝居のいくつかはもとの戯曲を読めというメッセージをくれている。シェイクスピアは素晴らしい残り香。
あとどれだけ生きるんだろうか。そんな考えがかなりの頻度で頭に浮かぶのが当然の年頃なんだわ。心は命の奴隷だからね。

訃報も混じっていた。今月はいくつか縁のある人の訃報があった。知った時の気持ちの色合いは少しづつ違う。

「ここから世界が始まる〜トルーマン・カポーティ初期短編集」2022/11/27 17:01

14の短編集、ほんの数ページの短編。まだ半分だけどそれぞれの余韻が独特で、細い煌めく糸に指先が触れているみたい。
ニューヨーク公共図書館にアーカイブされていた、カポーティの思春期から青年期に書いた未刊行のものを編集したとのことだ。
なんともいえない温もりが伝わる編集者や訳者の、原書では前書、日本版では後書としてある文章や解説など。気のせいだったらごめん。自分に。
実は「ティファニーで朝食を」だってずいぶん昔に読んだきりなんだ。それでも頭の隅に気になる作家として見え隠れしていて、読むのが惜しい感じがしてた。
去り行く時の美しい作品たちよ。

「川釣り」井伏鱒二2022/03/18 02:19

「川釣り」は釣りに関連する話がまとめられた短編集で、中に「掛け持ち」という短編小説があるが、それをやたらに褒めるのを聞いたか見たかしたので、読みたくなって探したらここに入っていたのだ。
井伏鱒二といえば「山椒魚」だけど、恥ずかしながら私はそれしか読んでいないのではないかな。それも最初は教科書でだろう。
短編集をパラパラめくっていると、じわじわ「山椒魚」を面白く読んだ記憶が蘇ってくる。山椒魚自体が好きなこともあるのだろうか。
なるほど、あんなふうに面白いものを書けるのなら「掛け持ち」の面白さも読まないうちから合点がいくような。
乞うご期待やな。

月報とか映画パンフレットとか2021/12/29 10:33

全集などに付いている「月報」や映画館で販売するパンフレットなどが日本独特のものだと最近知った。
「月報」という付録的なものは、こぼれ話なんかも含み重要なことが書いてあったりして、けっこう情報が豊富でありがたく面白い読み物だった。書き手がいいこと多し。
映画パンフレットは作らないことも増えたという。
製作会社と配給などの契約が関わっているとかないとか…まだよく調べてない。

本棚発掘/埴谷雄高と井上光晴2021/12/14 02:01

本棚から掘り出した昭和56(1981)年11月発行「國文学”埴谷雄高~幻想王国の司祭”」に埴谷雄高と井上光晴の対談が組まれていた。
これは面白い重要な対談なのに読んだのかどうかも忘れてる。
でも自分ローカルでは「全身小説家」を観る上で大事な中身だよ。
この対談を読んだら、あのドキュメンタリはいっそう面白くなるだろう。とはいえ、わがままを言えば本当はよく知りたくはないのだけど…。
何かと読み解くには無知であってはいけないと思いつつ、敢えて知りたくないという傾向があって、謎があるまま作品を観ているもどかしさみたいなものが好きなのだ。それだけ。
この本は一冊ほとんど丸ごと埴谷雄高の特集本になっている。スリルに満ちてる。読めば面白いのはわかってるから読みます。

本に添えられたメッセージ2021/12/06 01:19

ネット古書ショップで過去の展覧会のカタログを買った。
中身を出してしばらく眺め、初めて知る作家のページをめくったり、解説を読んだりして閉じて、ふと足元を見ると二つ折りの紙が落ちていた。拾うと一筆箋で、そこに数行のメッセージがあった。
今届いた本と一緒だったのか。
今まで何度もそこで買っているのだけど前に買った、ある本にも言及していて、それと今回の本を選んだことを格別に喜んでくれていた。
仕入れたものでなく、ドイツの現地で買ったものであったり、自ら観てきた展覧会のカタログだと書かれていて、私は嬉しくなった。
カードが入っていた本はカードを見る前にやっぱり私が欲しいものと分かってた。

井上ひさしの「百年の日本人夏目漱石」の”坊つちゃん”2021/11/07 14:16

井上ひさしの「ひと・ヒト・人」というエッセイに「百年の日本人『夏目漱石』」の章があり、「坊つちゃん」がどんな物語であるかを「初めて」知った。
読んでみたいという気が起こらずこの老境まで来たが、教師でいる主人公がなんとなく存在を続けて終わるような話だと、今まで思っていたのだ。面白いあだ名のついた人間をやっつけてスカッとするような事件と、美しい人が出てくるところばかりを話で聞くせいだ。
ところが豈図らんや、流石夏目漱石だものということだった。
井上ひさしは優しい言葉と、比類ない知識の僅かを使って日本の明治文学の時代背景から現代を分析して、新たな興味を持たせてくれた。チョムスキーを読むまでもなく。また、解剖学は無視できないから関する本を買った。
実は非常に怖い小説であることを知った今、読まずにおこうか。
いや、ほんとに怖いんだろうか。

でもまあ恥ずかしいことだよ。

受賞やら訃報、そのほか2021/10/26 20:15

天皇家の娘が一般人との結婚を発表し、唐十郎が文化功労者に選ばれ、白土三平と弟の岡本鉄二氏がわずかな日にちを隔てて亡くなったと、ニュース色々。
衆院の選挙報道をテレビは本気で取り上げず、天皇家子女の結婚を情緒的な言葉で盛り上げるばかりだ。ブランドは消せないがそこそこ削った彼女の結婚はいい始まり方だ。離婚があってもOKだ。すべて彼女の人生じゃないか。天皇制の犠牲者で終わるのを拒否はした。
文化功労者とはなんぞ、老境とは?ブルータスよ。
「カムイ外伝」をはじめとする大作をものした漫画界の巨匠は89歳で亡くなった。
東日本大震災から10年。悪政が続いたところにコロナが降りかかる。そしてまだ収束した訳じゃない。
自虐的な歴史観なんてものじゃない。国民が自虐が好きだから今の政府が保っているのよ。何をやっても政治は変わらないと言って、考えることをやめ、メディアは権力者につく。DVから逃れられない。

以下受賞に関する毎日新聞の唐十郎氏の取材コメント。
「2005年に紫綬褒章の内示を辞退した者に再度光を当てて頂けましたので大変驚きましたが謹んでお受け致します。井上ひさしさん、蜷川幸雄さん、山崎正和さん以来しばらく演劇界からの受賞者が不在とお聞きしました。この受賞が次の演劇人に結びつければ尚(なお)嬉(うれ)しいです。昨年から劇団唐組も芝居の延期や中止に追い込まれた現状に異風を起こしたいと願っております」

「妖精悪女解剖図 都築道夫」2021/07/28 20:27

解剖図とあっては買わざるを得ない。
都築道夫の作品がちくま文庫のコーナーにあった。忘れられていないことに震えるような愛しさを感じた。
私にとってこんな作家だったっけとちと驚いた。
この前ホテル探偵を読み返していたところよ。

「シートン動物解剖図」「解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯」2021/03/02 01:01

「シートン動物解剖図」と「解剖医 ジョン・ハンターの数奇な生涯」(ウェンディ・ムーア)の2点が目の前に揃った。
シートンは購入したもの、「解剖医〜」は図書館で借りた。
買おうかなと思ってたんだけど、図書館で検索したら、まあ、あるよね。

シートンについて。
数年前、科学博物館で行われた大きな企画展で、最後のブースにシートン関連の展示があった。
彼が残した手記の解説があり、シートンが晩年に後悔していると告白した一文があるという。そしてそれは狼王ロボに関するものだった。
シートンを知っている人なら狼王ロボの名を知らないはずはない。そのロボのことだった。ロボのパートナー、ブランカを捉えて囮に使い、ロボをおびき寄せることに加担し捕まえることに成功した。そのことを後悔していると手記にあったのだ。
私はこれを見て小躍りせんばかり、心でざまあ!と叫んでいた。
この狼王の一件は許し難いこととして私の人生に刻まれていることをご存知あるまい。
で、そのシートンの懺悔の存在をあろうことか、この年でやっと知るところとなり、この日の強烈な印象を残す。
で、この日の企画展がなんだったのかすっかり忘れてしまったのでした。